Rio通信: カルナバル


カルナバル@サンボードロム

会場であるサンボードロムは, 地下鉄の Praca Onze (第11広場) の駅の近くにある. 仮設会場, というようなものではなく, パレードのコースとなる通りの両側に, コンクリート製のかなりの高さをもつ階段状の建物が並んでいる. この階段は, もちろん観客の座席となる訳だが, 椅子もクッションも何も無い, ただの階段そのものである.

入り口でもらったパンフレットによると, パレードのコースは, 長さ590メートル幅13メートルの一直線で, 開始地点の手前に長さ92メートルの待機場所がある.

座席は, パレードのコースに沿って10のセクターに分けられており, 進行方向左側に, セクター3, 5, 7, 9, 11, 13, 右側に, ずっと長くセクター2そして, セクター4, 6 が続く. 92メートルの待機場所の左側がセクター1となっている (他の番号は欠番).

眺望の良さと値段の兼ね合いから, セクター5または11が良い, とブラジル人の友人に教わり, そこのチケットを買おうとしていたのだが, 早々に旅行社などが押さえてしまい, 通常の価格では買えなかった (ガイドブックには, 大半は即日完売とも書かれていた). で, コースに関してセクター11と対称の位置にあるセクター4で見ることとなった. 位置は対称なのだけれど, セクター4と同じ側にある, ものすごく値の張るセクター2の建物がコースに迫り出しているため, セクター4からではコース全体を一望することが出来ない. それゆえ, チケットの値段はセクター11の4分の1以下の50レアイス, 約3千円である.

チケットは, あるブラジル系の銀行が販売を一手に引き受けているのだけれど, 座席の位置, つまり, セクター毎にチケットを取り扱う支店が異なる. 自分で買ったのでなく, IMPAの人に頼んで買ってもらったのだが, お金を払うと支店では, まず, 整理券を渡される. そして, カルナバル期間の1週間前位になると初めて, 整理券をチケットに取り替える, という仕組みになっている. これは, 偽造防止対策とのこと.

サンバスクールによるパレードは午後9時に始まり, 各スクールの持ち時間は1時間20分. 全部で7校あるのだから, 予定通りに進行しても, 終わるのは朝の6時20分ということになる. 全部見るとなるとかなりハードな夜となる.

場所取りのために, 午後8時頃会場に友人と行ったのだが, 9時近くになると, 通路も座席ももうとにかく隙間のあるところにはどんどん人が入り込んでしまい, 大変な混雑となった. どうやら, こちらのセクター4は, チケットの安さからか, 地元ブラジル人, カリオカがたくさん押し寄せているようであった. その一方, 向かいのセクター11の様子を見てみると, 結構隙間があり, まばらに人が座っている. 我々は売り切れのためセクター11のチケットが買えなかったのに, これは, どういうことだろう.

パレードは午後9時に始まったが, 座席の位置の関係からパレードが実際に視界に入ってくるのは20分くらい過ぎた頃だった. そうなると周りの皆が立ち上がって見ているので, こちらもそうせざるを得ず, 座席のことはもうどうでも良くなってしまった.

14校のサンバスクールがこの年のパレードのためにそれぞれサンバを用意するのだが, 事前にその14曲が納められたCDが売られ, また, ここの入り口でも歌詞の載ったパンフレットを配られるので, パレードが目の前に来た頃には, 周りのカリオカ達は踊りながら大声でそのサンバスクールの曲を唄い, 踊り, 大変な騒ぎだった.

一つのサンバスクールのパレードには, 何らかのテーマを象徴した大きな“山車”と仮装した一群が大体, 7, 8セットくらい続き, その途中に, Bateria と呼ばれるパーカッションの一群と, それを率いるパレードの華である Rainha da Bateria が行進をしている. これは, Bateria の女王という意味. また, 歌手とギター弾きなどを載せた大きなスピーカ付きの車も混ざっている. さらに最後尾には, これはパレードの一部じゃないけれど, “御掃除部隊”という感じの街でよく見かけるオレンジの制服を着た清掃担当の人達が続く. パレード通過後のコースは, 衣装や山車の破片, 観客の投げたテープなどでゴミだらけになってしまうが, 各校のパレードは切れ目無しに続き, 間合いに休憩時間等はないので, コースを手早く綺麗にして行く必要があるからである. あるパレードの後始末をしている御掃除部隊の一人は, 清掃用具は箒も何も持たず, パレードの通った後のコースを独り占めしてダンスを披露し, かなりの拍手を観客からもらっていた. 観客の注目をパレードの誰よりも一身に浴びた一人かもしれない.

結局この日, 最初の5校のパレードを見て帰ることにした. 早朝の4時頃だった. 最初の2校のパレードは, 仮装行列の人達が, 漫然と歩いているだけのように見えて, あまり感心しなかった. しかし, 3校目のViradouro以降は, なかなかテンションが高く, 素晴らしいパレードだった. 特に, 4校目のサンバスクール Imperatriz によるパレードは, 衣装も見た目に綺麗で美しく, 行列の人々も何か密度が濃く見えた. 友人の応援する Mangueira も, 仮装の美しさでは Inperatriz に若干劣るけれど, 見ていてとても素晴らしかった.

5時すぎ位にアパートに帰ってテレビをつけると, 今日最後のサンバスクールのパレードを生中継でやっていたが, テレビでは, 臨場感が完全に損なわれ, 全く別物だった. やはり, 生で見ないとその素晴らしさは到底伝わらないもののようである. 切符の入手に苦労しても一見の価値はあると感じた.


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