実践編: 乗り方オニブスは, その停留所に立っているだけでは決して止まってくれない. そもそも停留所がどこであるか良くわからない場所がほとんどであるが, ‘正しい場所’, たとえば, 屋根まで付いている待合所でも, ただ立っているだけでは, 日本のように自動的に (?) バスは止まってくれない.
では, どうやって止めるか?
運転手の眼をしっかり見て, 手を上げて合図をし, ここに止まってくれーっと明確に意思表示する必要がある. 最初, 結構照れくさいカンジがしたが, 慣れてしまえば, これはある意味で非常に気分の良いことである.
日本の停留所は, 外国のそれと比べると異様な程にはっきりしている. そして, 少しでも停留所と離れたところでは, かなり明確な意思表示をしても, 止まってくれず, 置いてきぼりにされることは, 誰もが経験したことがあると思う.
こちらでは, 運転手とコミュニケーションさえ取れれば, いろいろな融通が利くのである.
たとえば, 停留所に近ければ少しくらい違うところでも, また, 後で考えるとあそこは全然停留所の近くでもなかったな, というところでも, 止まってくれー, と意思表示すれば, 結構止まって乗せてくれるのである. これは運転手にも拠るのだろうけれど, わがままな利用者のために10メートルくらい走っては, また止める, ということを繰り返しているバスも結構見かける.
また, うっかりして見逃してしまい, 走りかけたバスを後ろから追いかけるような状況になったとする. このときも, バスのサイドミラーを通して運転手をしっかり見て手を上げ, コミュニケーションが成立すれば, 走り始めてしまったバスや, 随分遠くにいるバスでも, きちんと止まって待っていてくれる. また, 気づいたときには歩道から随分離れた車線を走っているバスでも, 合図が通じれば, 日本では信じられないような強引な斜線変更をしてでも止まってくれる. そのような状況でバスに乗れた場合はなぜかとても幸せになる.
リオの人々を見ていて感心するのだけれど, 複数の車線がある通りをほとんど並行して2台バスが走ってきたとする. すると, 両方の運転手に分かるように, 『お前の向こうのバスだ!』とか 『お前のこっち側のバスだ!』 とかジェスチュアをして知らせるのである. 初めて見たときは, へーって感心してしまった.
結局, いかにコミュニケーションをうまくとるか, が重要なわけである. これはあたりまえのようだけれど, 日本人はそれが最も下手な人種のひとつではあるまいか, と思ってしまう.
後日談: ちょっと脱線だけれど, こういうことがある. 街を歩いていて,「あれ, こんな所, 普通バスは通らないぞ」っていう通りを走っているバスも, 頻繁じゃないけれど見かける. ブラジルの友人によると, 運転手と乗客の間でコンセンサスがとれれば, 交通渋滞を避けるためなどの理由から, 運行経路とは違う道でも走ってしまうのである (そのときの会話が理解できないとちょっと困ったことになりますね). 皆がそのような融通を利かせている訳では無いと思うが, リオの人々の感覚は, 「自分の希望をとにかく言ってみて, ダメだったら, また別の手を考えよう」 という感じである. とにかく『ダメモト』でやってみるのである.さらに後日談 (11月24日): 先日乗ったオニブスでのこと, 運転手が何かを大声で言い, そして乗客の何人かと言い合いになった. 何を揉めているのかさっぱり解らなかったけれど, その乗客たちが降りると, このオニブスはいきなり住宅街へ入っていった. いつもの経路とは全然違う.
「オレはこれから違う道を通るからな! いいな? いいな! よーし!!」ってなことを言っていたのだろう. 自分の降りたい場所をスキップされ, 全然よくない, と思った人達がさっき降りたらしい. 暴力沙汰にはならなかったのだから, 一応, 運転手と乗客の間のコンセンサスが取れたとも考えられる. でもこの運転手, 道をあまりよく知らないらしく,「ここじゃない. もう少し行って左!」などと一番前の座席に座っている客がナビゲータをしている. 段々道が狭くなってきて, このバスで往けるのかな, と心配になってくる. 十字路で曲がろうにも, 何せ道が狭い. 路駐の車を擦りそうになりつつ何回も切り返しをしてやっとのことで曲がる. こうなると乗客も各自窓の外を見て, 日本でいうところの 「オーライ, オーライ, ...」だと思うが, 大声を出して運転手に協力している. 車は擦らないにしても街路樹をごそごそバリバリやりながら, やっとの思いで見覚えのあるいつもの通りに出てみれば, 何のことはない. 全然進んでないじゃないか. これだったら, 一寸くらい我慢してもいつもの規定の正規のルートを通った方が早いんじゃないか, ってつくづく思ったけれど, しかし, 面白かった.さらにさらに後日談: 最近気付いたけれど, IMPA最寄りの停留所である Horto を, オニブス会社の人達が主張するところの ``17時半発'' のオニブス 125 (現実にはまったくオンタイムでないのでこのように回りくどい言い方をしてみたいです) に乗る機会が多いのだが, この時間の運転手はショートカットの常習犯らしい. 125 の正規の経路では, Horto を出ると, ガベア, レブロン, イパネマ, コパカバーナを経て, ダウンタウンへ向かうのであるが, よく, ガベアをすっ飛ばしてレブロンに直接向かっている. 先日は, 味を占めたのか, ガベアはもちろんのこと, レブロンとイパネマをすっ飛ばして直接コパカバーナへ行こうとしている. 大きなショートカットだからだと思うが, 車掌が20人あまりの乗客の一人一人に
『いいか? いいか! いいな!』と言いつつ車内を回っている. 自分はレブロンで降りるつもりなので, そう言うと, 舌打ちこそしなかったけれど, かなりがっかりした様子で, 今度は,『お前の降りたいのはどの辺か? Jardim de Alah のあたりか?』と尋ねてくる ( Jardim de Alah はレブロンとイパネマの境にある公園の名前). 『いいや, もっと手前だ!』と, 大きな声で言いたかったが, ポルトガル語で何て言うか解らなかったので, 『コラ! ちゃんとレブロンを通らないと許さんぞヨ!!』 というさらなる希望も伝わるように, 眼に力を込めてとても大げさにジェスチュアをした. 迫真のジェスチュアが功を奏したようで, 無事自分の降りたいところを通らせることが出来た. しかし, ちゃんと料金払っているのに, なんで, こんな苦労しなけりゃならんのかネ, というのが正直なところ. この時間のオニブスに乗る度に眼が疲れる, というのは避けたい. もっとポルトガル語を勉強しよう! (って. あとで読み返すと, よく解らない結論ですね)