Rio通信: オニブス


基礎編: 乗り方・降り方

乗車口は車体後部にあり, 降車口は前部, 運転手の脇にある (実は, 乗車口降車口を表す大きな矢印が車体に書いてある. 後で気付いたけれど). 乗車口を入ると, そこには遊園地の入り口にあるような “ミニ回転ドア”があり, その直ぐ左手脇に車掌が座っている (右側通行ゆえ, 乗って右手がバスの進行方向である). 乗り込んだらとにかく, そのミニ回転ドアを押し回して, 中に入りつつ乗車賃を払う. 回転ドアの前で, 小銭など探そうとモタモタしていると, 車掌にとにかく中に入れ, と言われる.

降りたいときは, 手摺に付いているボタンを押すか, 天井を走っている紐を引いて合図する.

乗車賃は, 90センターボである. 今年は, 90センターボである, というべきだろう. 実際, 毎年のように値上げをしているようで, 4年前に来たときは, 55センターボだったけれど, 昨年は80センターボ, 今年は90センターボという調子である (2000年の話). 多分来年は100センターボ=1ヘアルになるに違いない. 乗車賃の払い方は知る限りずっとかわらず, 前払い制である.

後日談 (11月16日): 案の定, というか, 今日オニブスに乗ってみると, 料金が1ヘアルになっていた. それを知らずに1ヘアル札を出して釣銭を待っていると,
「なんとかかんとか, ごにょごにょ, ウンヘアル」
と言いつつ天井近くに貼られた紙を指さしている. 多分, そこにはいろいろ理由が書いてあるのだろうけれど, それを見て自分の解った範囲では, 料金はとにかく「12月14日まで1ヘアル」ということらしい. ところで, 12月15日からいくらになるんだろう?

さらに後日談: 12月15日以降も, 料金は1ヘアルということになったらしい. オニブスに乗り込んで見上げた辺りに, 『1.00R』と貼紙してある.

さらにさらに後日談 (2001/01): バス代が10センターボ上がって, 上記を加えましたが, バス代なんて変化に乏しい料金のひとつかもしれない. というのは, 電気代やガス代など, あまりに安いのでこれまであまり気にせずに払っていたけれど, 請求書をよくよく見返してみると毎月その単価が異なっている. 日本での自動引落の伝票などろくに見たことも無く, きちんと認識していなかったけれど. 日本でもそうなのでしょうか? そんなことないだろうな. それぞれの料金値上げが取り沙汰されるくらいだから.

蛇足 (2001/04/30): セントロに行くため, 地下鉄には毎週乗るのだけれど, 先日4月27日に乗ったら, 10センターボ値上げして1ヘアル30センターボになっていた. はっきり日付は覚えていないけれど, 6月のいつかまでの暫定処置, という貼紙がしてある. でも結局バスの場合と同様に, きっとこのままの料金になるんだろうな.

オーパ さてこの乗車口にある, ミニ回転ドアであるが, 押し回しつつ通り抜けるにはなかなか力がいる. 来てすぐの頃, 胸を張ってぐっと押しても, 力の入れ方が悪いのか, 運動神経が鈍いのか, 女性でもすっと通っているこのミニ回転ドアが言うことを聞かず, 押し戻されてしまったりする. さらに, それを見ている車掌の人からは
『オーパ!!』
などと言われてしまい, これは結構, 恥ずかしいものがある.

自分の好きな本の一つに, ブラジルについて高橋 昇の写真と開高 健の文章からなるものがある. 『オーパ』がタイトルであり, 1メートル以上あるミミズの写真や, 切り倒した電信柱を使って牛を丸焼きにしている写真とか出ている本である. 表紙すぐ裏には,

何事であれ
ブラジルでは驚いたり
感嘆したりするとき,
『オーパ』という
などという解説がある. 『オーパ』なんて, 誰が言うんだろ? なんて思っていたけれど, ........ 自分が言われるとは思いもしなかった.

でも, 一回ネイティブの『オーパ』を聞き取ると, 実はいろいろな場面で, こちらの人は『オーパ』って言っていることに気づきました. 結構よく言っているんですね.

後日談: スルリと通り抜けている人を観察していて最近気づいたが, 回転軸から最も遠い部分を手で押しながら通るのが最も楽である . 力がいる, のではなく, コツがいるのである. 鈍いのは運動神経よりも頭脳のほうだ, といわれそうなことであるが, てこの原理を考えれば, これはtrivialであり, 胸を張ってぐっと押す, というのは実に無駄な力の入れ方である.

あと, そのミニ回転ドアを回すのを, 車掌の人が足を使って助けてくれている場合もあることに最近気づいた.

さらに後日談: 半年くらいして解ってきたけれど, ミニ回転ドアの右端を右ひざで押しつつ通るのが最も楽.

無賃乗車? 最初びっくりしたのは, いきなり前から乗ってくる人がいることである. 学生 (子供) とお年寄りの方は無料らしく, 前から乗ることになっているらしい. また, IDを見せつつ制服を着た人が, 前から乗ってくることもある. 多分同じバス会社の人なんだろう. ところで, オニブスの番号は重複のないように振られているが, 経営している会社はいくつあるのか知らないけれど, 車体塗装のデザインの違いから想像するに結構たくさんあるようである.

前からお金を払わずに乗ってくる人として, あと, お菓子や文房具などの物売りの人がいる. 最初それをみたとき, 非常に怪しげな感じがして, そんな物誰が買うのだろう? と思っていたけれど, 結構, この手の物売りの人から飴やチョコレートなど買う人がいるんですね. これにはちょっと驚いた. 興味本意の観光客や, ぐずっている子供などが親などに甘えてせがんで買う, というのではなく, 地元の人と思しきオトナが結構買ったりするので, へぇー, って思ってしまった (後日談: お菓子だけでなく, この‘車内販売’でボールペンやシャーペンなど買っている人も, 結構います).

あと, これは数字の聞き取りの練習として, 非常に便利である.

「何とかチョコレートを何個で幾ら」
というタイプの台詞を何度も繰り返し繰り返し, まことに聞き取りやすくハッキリと発音してくれるからである.

一方, また, 何を言っているのかさっぱりわからないのだが, 多分, 何らかの宗教活動をするために乗り込んでくる人もいる. 何かを書いたカードを, 乗客に配り (もちろん無理強いはしない), 短い何らかのスピーチをする. その後, カードを受け取ってくれた人の所を順々に巡り, カードを回収しつつ, また, 何らかの話をして, 降りて行くのである. 「何らかの...」がやたらと多いのは, 全く何を言っているのかさっぱりわからないからである.

後日談: ハンディキャップを負った『物乞い』の人も前のドアから乗り込んでくる. 車内を杖を突きつつ手探りで回る盲目 (弱視) の老婆, 松葉杖を突きつつ車内を回る片足の男性, また, 失った片腕の切断部分をまくった袖から見せつつ車内を回る子供, などなど... でも, 彼らが乗り込むことについては, ドライバーはもとより (さもないと決して乗り込めない), 乗客も, 小銭を渡す人, 完全に無視する人などいろいろいるが, 根っこ部分では許しているようである.

さらに後日談: これは, 多分『裏技編: オニブス利用法』という項目をつくって, そこに書くべきことだけれど, 無賃乗車の一種ともいうべきなので, とりあえずここに: ボタフォゴあたりで見かけたのだが, 停車しているオニブスの窓に掴まって一休みしている自転車がいた (もちろん休んでいるのは自転車に乗っている人). そのうち, そのオニブスが走り出すと, 掴まったまま, 一緒に走っている. 一緒に走っていると言ってももちろん自転車をこぐわけでもなく, 掴まっているだけ. 休んでいるんじゃなくて, 引っ張ってもらおうという魂胆だった. 映画じゃこういう場面はよく見るけれど, 結構危ない. 車輪に巻き込まれたり, 後続の車にはねられたりする. 日本なら制服着た人達がたちまち捕まえそうだけれど, その自転車のオニイチャン, バスに引っ張ってもらい, 悠々と海岸線沿いの道路を走っていった. なんか, うらやましかった.

さらに後日談: 大声が聞こえるので自宅の窓の外を見てみると, れいによって Rocinha 行きのバスが通りすぎるところだった. Rocinha はリオ最大の favela (スラム) である. Rocinha 行きのバスでは, よく, 中から街の人に大声で何か叫んだり, また, 窓から手を出して, 車体をバンバン叩いているのをよく見かける. でも, この日見たバスでは, 走っているバスの屋根に乗っている人達が大声で叫んでいた. 街路樹の低い枝の下を通りすぎるとき, わいわい騒ぎながら避けたりしている. バスの屋根で‘サーフィン’をしている漫画は, こちらで見たことがあったけれど, まさか, と思っていた. でも, 本当にバスで‘サーフィン’してしまうのですね.

後日談: 最近, 正真正銘ともいうべき無賃乗車方法が見えてきた. 大きくわけて2種類あるようだ. いずれも, 普通に後部にある乗車口から乗るのだけれど, 目的地までそのドアと車内のミニ回転ドアの間の狭い空間でじっとしているタイプと, 跨いだり床との間の空間をすり抜けて, とにかくミニ回転ドアを回さずに車内に乗り込んでしまうタイプがある. いずれも車掌の目の前でやるわけだけれど, 車掌とどういうコンセンサスで行なわれているのか, よくわからない. ミニ回転ドアを回さなければ乗務員がバス会社に報告する利用者数には影響しないので, つじつまさえ合えば車掌もあまり面倒なことは言わないのかもしれない.


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