受入態勢IMPAについたその日にいろいろな部署を巡って, さまざまな書類に必要事項を書き込んだり, IMPAの身分証明書を発行してもらったりした. とても手際よく物事が進み, すでに自分の研究室は用意されており, すぐに使えるように準備されていた. これはもちろんすべて, 自分のIMPA滞在のホストを勤めてくださるエステベスさん, そして, IMPAのスタッフのお蔭である. また, その他の理由として, 海外の研究者が頻繁にIMPAを訪れていることから, 訪問研究者の受入にとても慣れている, という点も挙げられる. IMPAが国際的に開かれた研究所であることの証左とも思われた.
一方, 最も心配していたのが, ネットワーク環境である. 海外に長期滞在した人・している人のいろいろな苦労話を, 行く前からずいぶん聞いていたからである. かな漢字のメールの読み書きするため, 日本からラップトップ (ノート型) パソコンを持っていったが, それをうまくネットワークに繋げるか, または, 繋がせてもらえるか, が気がかりだった.
漠然とではあるが自分としては, ローマ字のメールを読み書きするまでに2, 3日から一週間, さらに, ラップトップ持参とは言え, かな漢字のメールの読み書きができるかどうかについては自信がなく, うまく行っても1, 2週間はかかるだろう, という具合に見積もっていた.
しかし, 滞在先研究機関であるIMPAに着いてみると, それは全くの杞憂であったことがわかった. IMPAに行った初日に, 即, IPアドレスを割り当ててもらい, 自分の居場所となる研究室のLANのコネクタへ接続するのに必要なデータも, すべて丁寧に教えてもらった. アカウントは4年前に来たときに頂いたものがまだ残っていて, それを復活して使うことになった. 具体的には, 9月4日月曜日である. さらに, 自宅からも繋げるようにと, PPP接続方法, そして, 必要なデータも教えてもらい, 本当に至れり尽くせりだった.
さて, つい考え込んでしまうのは, 逆の場合である. つまり, 早稲田大学理工学部に外国から研究者が来た際に, どれだけのことがしてあげられるであろうか, ということである. これほど手際よくネットワーク環境を整えることができるだろうか? 自分にはよく分からない. mse や mn の人達に頼むとそれも可能なのかもしれないが, 自信は全くない.
後日談: ネットワーク環境は素晴らしいのだけれど, ちょっと, というか, かなりびっくりしたことがあった. それは,いきなり, 停電するということである. 来て一カ月の間にいきなり停電したことが2回ある. いずれも研究室で自分のパソコンを稼働していた最中だった. 実質的な問題は無かったけれど, これには驚いた.『研究機関で予告もなしに停電するとは!』 と思ってしまったが, そんな言い分は, こちらの人からすると, なんとずれたことを言っているのだろう, と聞こえるかもしれない. 実際, 予告無しに停電になって, 研究所内が真っ暗になっても, それに対して文句を言ったり騒いだりする人は皆無で, べつに何とも思っていない様子だった.
でも, 図書館で資料検索用に動かしたままにしてあるパソコンとか. コンピュータルームにあるパソコン, ワークステーションは, こんな停電の際, どうなっているのだろう? 全部の機械に無停電電源装置など付けてあるのだろうか? それともこちらの人同様にこちらのコンピュータも, この程度のことではビクともしないのか?
長期滞在のための諸手続 本来IMPAとは関係が無いが, この点についてもIMPAは事細かくサポートしてくれたので, 書いておきたい.
一般に何が必要かというと,
である. 在留届けは自分で行ったが, 他の2つについてはIMPAが面倒を見てくれた.
- 連邦警察での外国人登録
- CPF (Cadastro de Pessoas Fisicas) ブラジルの身分証明書取得
- 日本領事館への在留届提出
さて, このCPFであるが, 身分証明書としては通常, IMPAのもので十分ということなので, 多分, 無くても構わないらしい. でもこれが無いと, たとえば銀行口座を開設することができない. したがって, 日本から送金しても, そのお金を保管しておく場所が『タンス』しかない, ということになる.
手続きなど, お国柄か非常のんびりしている. 初めてIMPAについた日に, 翌週には, CPF も貰え, 連邦警察へ外国人登録にも行けるであろう, という話であった. で, その翌週にその種の手続きの面倒を見てくれる人の所に行くと, 「来週になったら連邦警察へ行く日程を決めましょう」とのこと. 「来週になったら行きましょう」 じゃなくて 「来週になった行く日程を決めましょう」である.
『えっ? 話が違うじゃん!』って思ったけれど, 係りの人がそう言うのだから客分のこちらとしては, それ以上何も言うこともできず, ただ待つことにした. 外国人登録は, 入国後1カ月以内ならOKだけれども, 気になっていたのは, 口座開設に必要なCPF である.
でも結局は思った程は時間がかからずに, 9月21日木曜日に, 外国人登録, CPFの入手, 銀行口座の開設が一挙に片がついた.
後日談: 非常に便利に思ったのでここに書き加えておく. ブラジルでは, 銀行口座からの自動引き落としという仕組みが無いらしく, 毎月, ガス・電気の請求書の来る月初めになると銀行には長蛇の列ができる. また, ガスと電気では払い込める銀行が違うので, それぞれ別々に行かなければならない. その点IMPAでは, まず, ブラジル銀行の支店が入っているので, そこで簡単に電気代が払える (大して混んでいないから助かる). また, ガス代はブラジル銀行では払い込めないのだけれど, そのような雑務を引き受けてくれる部署がIMPAにはちゃんとあり, 各自お金と伝票を渡すと, 皆の分を取りまとめて替わりに払ってきてくれる. これは, 自分のようなリオに不慣れな訪問研究員だけでなく, IMPAのスタッフにとっても非常に便利である. こちらの人に聞いてみると, この部署は, そのような料金支払いの代行だけでなく, 海外出張の際の航空券の予約, なども扱っているとのことである.因みに, 電話代はブラジル銀行で支払え, また, 水道代はビル単位で支払う仕組みなので, 通常, 家賃に含まれている.