商品価値こちらの人々の『商品』に対する考え方は, 何か根本的なところが日本と違っている.
CD イパネマ, レブロン界隈にはCD屋さんが結構たくさんあり, 輸入物はともかく, こちらの音楽のCDなら結構安く手に入る. おもしろそうなのがあったら買ってみようと思い, ある日, イパネマにあるお店に入ってみた. CDを手にとりジャケットを眺めていると, 店の人が寄ってきて,
「このCDはいーゼ! 今, 聴かせてやるよ!!」って言ったかどうか定かじゃないけれど, とにかくそういう調子で何か言いつつ, パリパリと, 眺めていたCDの包装をはがしてしまった.「あっ, ちょっ, ちょっと待った! これを 買うなんて言ってないぞ!!」と言う間もなく (そもそも, ポルトガル語で何て言えばよいのかわからなかったのだけれど), もう店のCDプレーヤにかけている.これはマズイ状況になった, と思った. 大して高くはないけれど, ちょっと手にとっただけのCDを買うハメになってしまった, とその時思ったからである. しかし, その店員は
「どーだ! いーだろ!!」という顔をしてから他の客の方へ行ってしまった. こちらがそのCDを買うかどうかについて全く無頓着な様子である. 結局, どっちでもいいらしい. ちょっと安心して店のCDをよく見てみると, 包装の剥がされたCDが随分たくさんある.日本ではCD屋に行って包装を剥いでしまったら, もう買わないとお店の人は許してくれない気がする (多分, 叱られますね). 日本では, 封が開いたCDは (新品の値段では) 誰も買わないだろうけれど, ここブラジルでは, 封が開いているかどうかなど, 売る側も買う側も大して気にしないらしい. 確かにCDは音楽を聴くためのものだから, 音さえちゃんとしていれば, 封がされていようがいまいが関係ない, といえばそれまでであるが... どんなもんでしょうか?
箸立て ある日, 日用雑貨の店で日本で言うところの『箸立て』 (という名称でしょうか? 箸やスプーンなどを洗った後, 乾かすために台所で使うもの) を買おうとしたときのことである. ちょうどいいのがあったのだが, それは, 皿などの食器立てとセットらしくナイロンの糸で結んである. 食器立てはもう買ってあるので, お店の人に 「これだけ売ってないの?」 と聞くと別の物を見せてくれたが, それはバカにオオゲサでバカに高い. 「高いね」 って言うとその店員, それじゃ, ってんでハサミを持ってきた. さっきの『食器立て+箸立て』セットのナイロン糸を切ろうとしている.
この店員, 何を考えているんだろう? セットでいくら, と値の付いている物をばらばらにしてしまって良いはずがない. CDの包装を剥がすのとはちょっと違う. で, 切ってしまう前に,
「これだけで, いくらなんだ?」と聞いてみた. セットと同じ値で売りつけられたらバカみたいである. このときにはすでに「ちょっと待って」のポルトガル語も知っていた. するとこの店員, 本当に, 先のことは絶対に何も考えない主義らしく, そういえばそうだな, ってんで今度は, フロアマネージャらしき人に聞きに行った.やはりマネージャになる人はそれなりに先のことも考えている. これだけじゃ売れないからダメ, と説得しているが, この店員は, なんで? どうしてなんだ? とマネージャに食い下がっていた. 本当になぜイケナイのか理解できない様子だった. ささやなかる日伯友好のためだったかもしれないけれどね.
フィルター リオは水質が悪く, 地元の人でも決して水道の水をそのまま飲んだりはしない. だからアパートの台所にはフィルターが必ずついている. そして, フィルター本体だけでなく実際に濾過をする部分の詰め替え用カートリッジも, いろいろな種類が売られている.
先日, アパートのフィルターの水の出がかなり悪くなったので, そのカートリッジだけ交換しようと, 水道関係の部品がごろごろしているお店に行った. フィルター全体でなく中身の詰め替え用カートリッジだけ欲しい, と言うと (この説明には苦労した), 店員が探してみるがカートリッジは品切れらしい. 「それなら結構」と諦めて他の店に行こうとすると, 店主らしき人が, 店にあったプラスチック製の簡易フィルターのパッケージをバリバリと開け, 本体からカートリッジだけ取り出して「これならどーだ!」と言わんばかりに, こちらに寄越した.
「ちょっと待って」というスキもなかった. フィルター全体の半値弱で, 5レアイスだったが, 高いか安いのか判らない (後日談: 実はちょっと高い). とにかく買って帰った. 店主の勢いに気圧された観がある.
あと, フィルターを分解するなら, 手をきちんと洗ってからにして欲しい. 渡された陶製フィルターには, 店主の掌紋指紋その他いろいろが, 墨痕鮮やかに (?) 付いていた.