服装職場の同僚にしてみると, ブラジル, とくに, リオデジャネイロで見かける人間は全員, すべてが若い女性であり, 海岸でも街中でもオニブスの中でも所構わず皆, 高々ビキニのみ着けて, サンバを一日中踊っているのではないか? いや, そうに違いない! と, 想像 (というより妄想?) 逞しゅうしている様子だった. (同僚全員とは言わない. 夢見る中高年齢層に集中か?).こちらには, 9月2日土曜日朝に着いたが, あいにくの雨降りでかなり涼しい. 出迎えてくれたブラジルの友人からは,実際, ブラジルへ発つ前に何人かの同僚から, 大体次のような意味のことを言われた:
『カジクンね, 独身であんな所行ったら, 大変なことになるよ!』余計なお世話である.多くの人々の夢や幻想・妄想を打ち砕くことになるが, やむを得まい. 学科名も数学科から数理科学科に変更したことだし, ここには, 科学者の冷徹な眼で見た現実をキチンと書き記しておきたい.
「一週間以内に太陽が見れなかったら, 日本へ帰る航空券を買ってあげます」と冗談まじりに言われていたけれど, 次の週末ようやく晴れた.
こちらでは9月は冬であるが, 晴れれば日中は30度位にまで気温が上がり, 海岸は多くの人で賑わう. 皆, 日光浴をしたり, サッカー, バレーボール, そして, サーフィンなどを楽しんでいる.
海岸ではみなもちろん水着である.
男性は, ショートパンツ型の海パンだけれど恰好良く裄が短くできているものを身につけている人が多い. 競泳用のものと思われる. クールに決めたいカリオカ男性は, 体形が競泳用でなくとも一向に気にせずに, これを愛用しているようである. 私もこの潔い態度を見習いたい. 一方, だぼだぼのバミューダパンツの人も結構いる. これは, 少年や, スリムな見るからに黒人という感じの人に多い気がする. また, 日本で一般的な競泳用の細い三角形のパンツをはいている人も, 余り多くはないがときどき見かける. これはなんとなく, でっぷりしたお年寄りの方に多い気がする. 少し昔はその形がカリオカ男性御用達だったのかもしれない.
さて, 女性はというと, 容姿・年齢・体形を問わず, ビキニである. ビキニといっても日本のものとちょっと, というか, だいぶ違う. カリオカ女性御用達は, かなり『ムダのない洗練された形』で, 見たところ, 4枚の三角形の部分と紐の部分からできている (展開図は自分で考えましょう; [ヒント] 三角形は各連結成分に2枚ずつ).
さらに洗練された形のビキニは
fio dental, フィオデンタルと呼ばれるそうである. 『フィオデンタル』とは, 元来は, デンタルフロス, 『歯間清掃用綿糸』のポルトガル語訳であるが, そのように細いビキニもこう呼ばれるわけである. 念のため付け加えると, ラテンのご婦人方に『私もう若くはないから, フィオデンタルはどうも恥ずかしくて...』などという日本人的発想は全く無い. どこがウエストか判然としない方もフィオデンタルで堂々と勝負している.さて, 晴れた日の日中はともかく, 朝や夕方はかなり冷え込む. 雨など降ればたちまち12,3度位まで落ち込む. それでも, リオの人の多くは街中を, かなりの薄着で歩いている.
イパネマ, レブロン辺りの街角には, 自動的に現在の時刻と気温を交互に表示する, 大きな看板というか, 掲示板がやたらたくさん立っている. 明らかに壊れているのもあるけれど, そして, そうでないにしろどれほど正確か判らないけれど, 一応の目安にはなる.気温はそれほど高くはないのに, 真夏の横浜, 東京辺りの人の格好よりも薄着をしている人が目立つ. 上が, 半袖Tシャツ, 袖なしシャツ, または, タンクトップ (何か古い言葉ですね), 下は, 足首まであるジーンズを履いている人もいるが, 多くは, バーミューダパンツか短パン, 女性ならさらにミニスカート, で, 足もとはサンダル, というのがよく見かけるパターン. さらに, 日本で言うワイシャツのような生地のものよりも, ニット地のものを着ている人が多い. 「あなた, パジャマまま外に出て来ましたね」 と言いたくなる服装で外を歩いている人も結構いる.付足し 温度計で思い出したが, こちらでは, 体重計の置いてある薬局が非常に多い. 入り口に置いてあり, 通りすがりの人でも気軽に利用できるようになっている. もちろん無料である. 薬は買わないのだけれど, ときどき利用させてもらっている.
最も薄着の人達となると, これはほとんどが観光客のようである. 晴れた日など, イパネマのメインストリートでは, フィオデンタルにサングラスで決めたオバサマ方がのっしのっしと歩いている姿などよく見かける. また, そのままでは周囲の視線だけで陽に焼けてしまいそうなご婦人方は, 下にショートパンツを着たり, または, タオルなどを巻きスカートにしている. 男性では, 海パン一丁にサンダル履きである.
一方, 薄着の人ばかりでなく, 背広にネクタイのビジネスマンや, スーツを着込んだOLの人, ジャンパーやジャケットなどでとても厚着をしている人 (お年寄りに多い) も見かけるが, そして, 多分, ダウンタウンや官庁街の方へ行けば, その比率はさらに高くなるのだろうと想像するが, ゾナスールと呼ばれるリオ南部では, 以上に述べたようにラフな服装で薄着の人が非常に多い感じである.
後日談: ある日, イパネマの街の往来で, 巨大な肌色の半球体をお腹に装着しているビキニの女性を見かけた. なんとなく『未来世紀ブラジル』を思いだしつつ, 「宇宙的ニューファッションの, 新型ウエストポーチか類なのかな? こんなもんが流行っているなんて, やっぱりブラジルはすごな!」と一瞬, 思った.余りに見事な球体ゆえ作り物だと錯覚したが, わき腹に継ぎ目というか境目が無いし, リアルな御へそも付いている. どうやら自前らしい. お腹に赤ちゃんがいる, とも考えられるが, それを, ポッコンと無防備に剥き出しにして街を歩いたり, オニブスに乗ったり, そんなバカなことをするはずが絶対に無い. 多分, すごく太ってしまい, 暑くてたまらないから剥き出しにしているのだろう, と納得した.
でも, 何回かそういう方を見かける内に, 皆, 20歳前後, 多くは10代と思われるとても若い女性ばかりである. そんな体形になる理由はもう赤ちゃんしかない. 最初から何となくその可能性はアタマのスミにあったけれど, 赤ちゃんのいるお腹を平気で剥き出しにする, というのには, 心底オドロイタ. 日本の御母様方がご覧になったらびっくり仰天するに違いない. 一方, カリオカは一般に薄着で, 寒さに強そうに見えるが, これは, ひとえにこの『胎教』の成果なのかも知れない.
学生服: ところで, 今住んでいるアパートの隣のブロック, 最寄りのスーパーマーケットに行く途中に学校がある. 中学校, 高等学校位だと思う. 前を通るときは大抵たくさんの学生がうじゃうじゃと門の前でたむろしている.
彼らの服装を見ると, 男女を問わずほとんど全員と言っていいほど, ジーンズパンツまたはバミューダパンツに学校のロゴの入ったTシャツである. これは, このアパート近くの学校だけでなく, あちこちで見かけるこの年代の学生は, みなこの種の格好である. 多分, これが彼らの制服なのだろうと思う. なぜか, このTシャツを着てスカートをはいている女の子は見たことがない. ジーンズなどを履くことを義務としているのかどうか知らないが (そんなことするはずが無いと思う), 学校のTシャツさえ着ていればOKのようである.
夏に向けて 最近, 12月ともなると, 暑い日も多くなってきて, 晴れれば35度は行く. もうジャケットを持ってIMPAへ行ったりはしていないが, 夕方急激に冷え込むことがあり, 油断すると一発で風邪を引く. しかし, 自分の見たところでは, こちらの人々の服装は, 9月の頃とあまり変わらない.
この辺の事情は, 年間を通しての毎月の平均気温の変化よりも, 毎日毎日の気温の変化の方がはるかに大きい, という点にある. つまり, 9月と今これを書いている12月を比較すると, 平均気温としては, せいぜい5度くらいしか変わらないと思う. しかし, 1日のうちで, 朝夕が10度代, 日中が35度を越える, という日はザラにある.
夏のカリオカ ここからはリオの真夏, 1月になってからの話を書きたい. 前項で「9月の頃とあまり変わらない」と書いたが, やはり薄着というか, 上半身について, 男性ならすっぽんぽん, 女性なら水着そのまんま, という人が増えてきた. IMPAへ行く途中の交通の激しい交差点の中心に立っている温度計は, 40度など指している日もかなりある. 壊れているのだろうと思いいくつかみてみたけれど, そうではなかった. 自分としては上半身すっぽんぽんでIMPAに行きはしないが, (半袖としても) とにかく袖のあるものは着たくない, という陽気になってきた.
1月中旬になってくると, 最近40度の日が多く, 「ついに, リオの夏だ!」と思っていたけれど, 「これは夏の始まりだ〕, なんて現地の人に言われてしまい, このさきどうなることやら...
夏の終わり ここからは3月下旬以降の話だけれど, 結局, カリオカの服装は, 9月10月とあまり変化がない. 最も変化があったのは自分の服装で, 暑さのため1月2月はIMPAへは, とても袖付き衿付きのシャツや長ズボンを着て行くことが出来ない. 足元もサンダル履きで, 靴下など履く気にはならなかった.
2月の下旬辺りから確かに夏の終わりを感じるようになり, 涼しい日が多くなっている.
いきなり冬? 5月になると急に寒いと感じる日が多くなってきた. 5月上旬に1,2週間ほど天気の悪い日が続き, 急激に冷え込み, たちまち風邪を引いてしまった. 寒いと言っても, 日中は20度を越えるのだけれど, それでも寒いものは寒い. 冬を忘れた身体になってしまったようである. こうなると街にはオーバーや厚手のジャケットを羽織ったカリオカが目立つのだけれど, 面白いことに, それでも半袖Tシャツに短パンという人もいる. バス停などでぼんやり眺めていると, 日本の感覚では真冬に対する防寒着の人と, 真夏の軽装の人が混在している.