ドライバーこちらの運転はメチャクチャ乱暴である.
たとえば, オニブスの場合, 立っているときはもちろんのこと, 座席に着いているときも, ちゃんと足を踏ん張って手摺につかまっていないと, 転がってしまいそうになるほど乱暴である.
とても狭い路地をスルスルと通り抜ける, 日本のバス運転手の技術にはすごいものがあるが, こちらの運転手は, よくぶつからないな, と感心するほどギリギリのところで他の車をかわして, リオの街を猛スピードで走り回っている. 日本だと会社が違ってもバスどうしで車線を譲り合ったりするのだが, こちらは, 相手がバスだろうが自家用車だろうが, 関係なく, スキがあれば割り込み, 追い越そうとするのである.
また, タクシードライバーの運転技術もすごい. あまり何度も乗ったことは無いのだが, 運転手横の前の座席などに乗ってリオの市内を走ると, タクシーの床を思わず右足で踏みつけてしまう場面が多々ある. もうちょっと車間距離をとってくれー, とか, そこまでして割り込まなくてもいいから, などと思ってしまう.
こちらの運転を見ていて思うのは, 『車線』の概念は希薄で, オニブスやタクシーに限らずドライバーはみな, どうやら,
『車間は狭いほどCool!』と信じている節がある.後日談: 先日イパネマで, オニブスが横腹でトラックのサイドミラーを砕くのを見た. かなり大きな音とともにサイドミラーがもげ, 自分だけでなく周りにいた人達も「!」っとなって振り返っていた. 初めて目撃した接触事故の現場である. 双方車を停めて事故処理の手続きを始めるのだろうと想像しつつ, 眺めていると, 壊された方のトラックは何ら文句も言わず, オニブスは当然の如く, 両者ともそのまま行ってしまった. 道にはサイドミラーの枠が転がっている. トラックの運転手はサイドミラーの付いていた部分を手でちょっと撫でていたが, 人間じゃあるまいし, それじゃ治らない. 自分のトラックじゃないから壊れてもいいや, って思っているのかそれとも, 文句を言うのは面倒臭く, それくらいなら自分で直した方がはやい, って思っているのか. どういうことなんだろう? もう理解の範疇を超えている.後日談: 自家用車どうしの出合頭の接触事故とか, バスどうしの追突事故など, 小さな (?) 交通事故は頻繁にあるようだけれど, 先日, ギョッととなることがあった. 国際空港近くのフンドン島にあるブラジル大学 (元 リオデジャネイロ連邦大学, 元々 ブラジル大学) へ, 講演を聴きに行ったときのこと. 友人の車で高速道路 (Linha Vermelha) を走っていると, 行く手にもうもうと黒い煙が上がっているのが見える. 何かと思ったら, 合流してくる路線で前部座席から大きな炎をあげてタクシーが燃えていた. でも, 消防車も警察車両も見あたらず, 近くではタクシーや自家用車が何台か停車してそれを眺めている. 結構, 異様な光景だった. 燃料に引火すれば爆発するかも知れず, 結構コワイ.
哀れな救急車 日本では, 救急車やパトカーなどの緊急車両がサイレンを鳴らして走ってくれば, 周りの車は行儀良く脇に避けて止まり緊急車両が行きすぎるのを待つ, というのが常識である (道路交通法にあるのかもしれない). その緊急車両の邪魔になるはずがない車までもがヒクツな程に
「へへー, どーぞ, 御通り下せーましー」って感じで止まっているのをよく見かける (何を隠そう, 自分だってその一人だ).しかし, こちらは違う.
もちろん, 緊急車両の邪魔になることはさすがにしない. たとえば, 渋滞で車が全然進まないときは, 緊急車両が後ろから来れば, 脇に避けてその車両が通れるよう, 皆さすがに協力しあう. でも, 交通がスムースに流れているときは, 話は全く違う.
ある日オニブスに乗って, フラメンゴ海岸沿いの非常に広い, 片側3, 4車線はある道路を走っていたときのことである. 例によってオニブスはその広い道路を猛スピードで爆走し, 他の車と熾烈なレースを展開していた. そのうち, サイレンが聞え前方に先を行く救急車が見えた. と思ったらその救急車, エンジンが弱いのか何なのか知らないけれど, このレース中のオニブスたちにどんどん抜かれてしまったのである. のろいのだから仕方ない, といえばそれまでだけれど, あれは見ていて気の毒だった.
さて, カリオカの交通ルールに対する感覚はどうか?
それは, 事故が起きなければよいだろう, という感じである.
信号機 たとえば交差点などで, 歩行者が信号を守らないのはもう当然のこととして, さらに, 自動車も, 横切る車がいなければ, 信号が赤でも平気で行ってしまう. 友人の車に同乗していて, こちらが「あれっ? 赤だったぞ」って顔をしていると,
「夜なんか, 信号で止まっていてホールドアップに遭うことだってあるんだぞ, だから, 赤でも行けるときは行くのだ! ワッハッハー!!」と言っていた. 反省の色は全く無い. 「その, どこがワルいのだ?」って顔をしていた. ホールドアップ回避が信号無視の理由になるかどうかは別であるが, ブラジルでは, 信号機とは『単に交通整理のための道具』であり (本来その通りであるが), 『とにかくひたすら守らなければならないもの』ではない. 何か, 日本とは物を考える基準・尺度が違うのだな, とヘンに納得してしまった.後日談: 自分にはほとんど信号は黄色と思えたけれど, 信号無視で警官に捕まえられた車を目撃した. そういうこともあるのか, とちょっと自分の認識を改めた. 何となく, 警官の腹の虫の居所が単に悪かっただけではないか, という気もするのだが...方向指示器 街を歩いていて, 交差点など渡るときに思うのだけれど, リオでは, 車の方向指示器は全くあてにならない. というか, あてにしては危ない. 方向指示器を見て, あの車は曲がらないな, と思って歩道を渡ろうとすると, いきなり曲がってきたり, また, 右折のサインが出てるので, 曲がるのを待っていると, そのまま直進し, 方向指示器はそのまま点滅し続けていたりする. 全部の車両がそうだ, とは言わないが, とにかくでたらめである. ドライバーは, ときどき気まぐれに, いろいろな方向にピッピッと出してみたりしているんだろう, と勘ぐりたくなるほどである.
だから歩行者としては, 車の進路と方向指示器とは全く無関係, 線型無関連, 一次独立で, 方向指示器は電飾の一種と考えていた方が安全である. また, ドライバー達も, 方向指示器などあてにしていないようである. どうやら, 他のドライバーの顔や眼を見ながら運転しているようである (これは日本で運転するときも大事ですね) .
後日談: 最近, 思い当たったけれど, こちらの人々は日本の『原付き』(または自転車そのもの) の感覚で自動車を運転しているのですね. そう思うと, いろいろなことが納得できるようになってきました (納得してもしなくても変わりはないけれど).路上駐車 リオは車にとっては無法地帯のように思われるかもしれないが, 全くそうとは言いきれない. たとえば, 路上駐車については, 結構厳しいものがある.
駐車禁止の路上に車を置こうものなら, すぐに違反切符を切られ, 罰金が120レアイスと友人は言っていた. 夜から早朝にかけての住宅街など, 特定の地域の特定の時間帯は駐車出来る場所もあるらしい. でも, 駐車を許された場所でも, 一般にはいくらかの駐車料金を払わなくてはならない. 場所によって料金そして駐車できる時間は違うらしい. ある場所は2レアイスで一日中駐車でき, ある場所は2時間までだったり, また, もっと料金が安かったりする.
日本では考えられないのは, その料金徴収方法である. そのような場所には, 街のブロックごとに, 『RIO ROTATIVO』 と書かれた緑と青のベストを着た料金徴収係りが必ずいる. この人たちは, 料金の徴収だけでなく, 車の誘導を行ったりしているのだが, 膨大な数の人間をこの駐車料金徴収に使っていることになる.
さらに, びっくりしたのは, 法律上無料で駐車できる時間帯になると, 今度は, 非公式の『料金徴収係り』が現れることである.
それは夜だったけれど, 友人が車を停めると, ふっとわいたように人が現れ, 車に寄ってきたので, これはホールドアップの類かと思ってしまった. 最初見たとき, 本当にびっくりした. でも, 友人は慌てず騒がず当然の如く, 1レアイスないし2レアイスのお金を払った. もちろん緑と青のベストなど着てない. ただの街の人である. 「何で払うの?」って聞くと,
「盗まれたり傷付けられたりしないように, 車を見張ってもらうためだ」と言う. 「じゃ, 払わないとどうなるの?」 と聞くと,「仕返しに, 車体を引っ掻かれたり, ガラスを割られたりすることがある」と言っていた. 日本の常識など全く通用しない, 何だかめちゃくちゃな話に聞こえるけれど, これがここの現実だそうである.この『料金徴収係り』だけでなく, リオには, そこに住む人には便利だったり不可欠だったりするのだけれど未登録, または, 非公式なモノがたくさんある. これはまた後日書き加えることにしよう.