Rio通信: 出国前


生活面での準備: 語学

ブラジルにはこれまでに出張で2回行ったことがある. 1回目が1カ月間, 2回目が2週間ほどの滞在だった. だから, 全くブラジルを知らないわけではないのだが, 一年間滞在するとなると, 心構えも, ちょっと変わってくる.

ポルトガル語: 初めて行くまでは, 無知なことに, 彼らは (彼ら独特の) ブラジル語をはなしているんだろう, なんて漠然と考えていたが, ブラジルの公用語は, ポルトガル語である. 最初の出張では, 「ありがとう」を意味する「Obrigado」だけ覚えて行き, あとは, いろいろな場面に遭遇するごとに, JTB発行の「ひとり歩きのブラジル・ポルトガル語自遊自在」と, 現地で購入した「Collins Gem ポルトガル語-英語・英語-ポルトガル語辞典」で, 何とかなった. また, ちょっとした一言については, ブラジル人数学者のエステベスさんに教わったりした.

超基本会話: 月単位の期間で滞在したことのある外国は, アメリカ合衆国とブラジルだけであるが, 初めてのブラジル滞在のあと考えてみると, これさえ覚えれば大学や研究機関の外でも大体何とかなる, というフレーズがよく見えてきた. 英語についてはマトモにしゃべれないなりにも, 適当に単語を並べてごまかすということで, うやむやにしているので, どんな単語, どんなフレーズが重要か, あまり気付かなかったが, ポルトガル語となると, 単語は一つも知らないので, 必要になった単語から順々にはっきり認識する, ということになる. したがって, 現地の人を伴わない旅をする際に必要な単語, フレーズが浮き彫りとなって, とりあえず何を覚えて行けば良いのか非常によくわかった.

その結果, 短期でも海外出張の際, 最近, まず覚えることにしているのが

である. さらに, も覚えればもう完璧である. って書いてあまり本気にされても困るが, まあ, 大体何とかなるものである.

数字: 買物をするときなどに重要なのは, 数字 (の聞き取り) である. いくら? と尋ねた答が聞き取れないと, 結構面倒である. また, ごまかされることもある. また, ペラペラ言われた電話番号や住所, 部屋番号など, 相手を目の前にしていれば, 書いてください, といえるが, 電話で予約を取る際など, 聞き取れないとどうしようもない. そもそも, よく分からない外国語 (ここでは英語の話をしています) で, さらに面と向かってでなく電話でやり取りするとなると, 相手の言うことは聞き取れないし, こちが最も得意とするボディーランゲージも封じられ, もう, 大変である.

潜在能力: しかし, これは経験のある人なら 「うん, そうだ, そうだった」 と同意してくださると思うが, 人間, 何らかの強い欲求があると, それが引き金となって眠っていた能力が発揮されるようである. ライブハウスのチケットを取ろう, とか, コンサートやミュージカルの席の予約をしよう, となると, なぜか不思議と, 電話でも急に数字もよく聞き取れたりするものである.

その一方で, あまり面白くもない数学の講義など英語で聞いていると, 簡単なことを言ってるんだろうなという部分でも, イマイチよく聞き取れなくてチンプンカンプンになってしまったり, ひどいときには, 既に取れたはずの時差ボケなどもよみがえってきて, 急に意識が遠くなったりするのである.

メニュー: ブラジルで最初に入ったレストランでは, 初めの30分位はメニューをにらんでずっと辞書を引き続けた. かなり変な客だと思われたに違いない. 単語が英語と全く違う (ように思える) ので苦労するが, それでも, 使っている文字がアルファベットであるということは, とても助かる. 実際, 韓国に行ったときにこれは痛感した. 韓国の文字はあのハングル文字である. 当たり前のことであるが, 文字を覚えなければ辞書を引くこともできず, 街を歩いても, 「この店は, レストランなのか? 何かを売っている店なのか?」と迷うことがしばしばである. 韓国のことはまた別の機会に書くことにして, 今はブラジルである.

ラジオ講座: ポルトガル語については前回までに, 超簡単な買物ができるくらいには, 基本的単語は覚えたが, 文法など全く知らなかった. 今回は一年間行くのだから, もっと気を引き締めて, 勉強しよう, と思い立った. で, まずは, カセットテープと会話集が一体となった教材を使って, 勉強を始めた. また, 丁度, タイミングの良いことに, NHKラジオで「短期集中ポルトガル語入門」という番組が始まり, 今はそれを聞いている.

これは, なかなかよくできた番組で,

当たり前のことかもしれないけれど, 語学の講義では (実はどんな講義でもそうなのかもしれないが), 声が耳に心地よい, ということは, 大事な条件かもしれない. また, 扱っている題材も実用的でこれを覚えておいたら便利だろうな, という言い回しがぽんぽん出て来る. 非常によくできた短期講座と思えた.

語学の勉強: 多分, 他の言語についても, このポルトガル語入門講座のようにためになる内容なのだろう. そういう意味では, たとえば英会話など勉強すれば, 必要な場面も多いはずだし, よいのだろうけれど, 今でも, 英語 (そしてフランス語) を勉強しようとすると, さまざまな悪夢が走馬灯のようにアタマとココロを駆け巡り, って程じゃないけれど, 有り難い``教育''の成果として, かなり根強いコンプレックスが未だに自分の中に存在するのを確認するハメになる.

その点, ポルトガル語には何らコンプレックスが無い. 全くと言っていいほど無い. 初めてブラジルに行ったとき, 新しい言葉を覚えるのが, こんなに面白いとは!! と感動してしまった. そして, 感動した自分にまた驚いてしまった.

それで何故なのだろう? と考えてみると, そういえば, ポルトガル語に関しては, 誰にも強制されたことがない, 誰にも感じ悪くチェックされたことがない, 誰にもいびられたことがない, ということに, はたと気付いた. 強制は何物も生み出さないのである. これは語学教育だけの問題ではない. 大学教育に携わる一員として, よく考え直さなければならない点である (って, 急にマジになってしまった).


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